「不登校 保護者らによる実態調査」心の声 聞いて生かして
不登校の子どもを持つ保護者が始めた「多様な学びプロジェクト」が、昨年の秋から年末にかけ不登校の実態調査をインターネットで実施し、その結果を発表しました。「ひとりの小さな声を変える力にしていきたい」と呼びかけ、不登校の子ども474人、不登校元当事者402人、保護者1935人が回答しています。
「子どもが考える学校へ行きづらいと思い始めたきっかけ」の1位は、「先生との関係(先生と合わなかった、先生が怖かったなど)」で36・3%です。2022年度の文部科学省の不登校・問題行動調査では「教職員との関係を巡る問題」は1・2%で、認識の差の大きさに暗澹(あんたん)たる思いです。
2位は「勉強は分かるけれど授業が合わない(授業が分かるけれどつまらないなど)」で35・2%、3位は「学校のシステムの問題(価値観が古い、時代に合わない、風土に合わないなど)」で28・3%です。5位に「友達との関係(嫌がらせやいじめがあった)」が23・8%とありますが、文科省調査では「いじめ」は0・2%でした。実態とのあまりの乖離(かいり)に批判の言葉を失います。
アンケートは多岐にわたりますが、興味深いのは「子どもたちのニーズ」です。「あなたの今の気持ちに近いものに全てチェックしてください」と子どもたちと考えた回答項目が用意されています。
1位は「社会全体で不登校の偏見をなくして(『不登校の子』という目で見ないで)」44・5%でした。2位は「学校が変わってほしい」36・9%、3位は「安心して休みたい」36・5%。「『学校に来て/行きなさい/どうしたらこられる?』と言わないで」も34・2%でした。
この他に「大人の考えを押しつけないで私の話を聞いて」「学校や勉強から離れたい」「同じような経験をしている子ども同士で話したい」「将来はどうするの?と聞かないで」「(学校に行かないことが理由で)親が不安になったり家族でケンカしたりしないで」「ゲームやユーチューブやテレビを一方的に取り上げないで」といった項目が続いています。
子どもたちの顔が見え、心の声が聞こえてくるようです。国の不登校対策が子どもたちの声を聞かずに実施され、失敗し続けてきたことがよく分かる内容です。不登校の子どもを持つ保護者が子どもたちと共にアンケートを作り、実態を発信した説得力のある取り組みです。結果が生かされることを願わずにはいられません。
信濃毎日新聞 2024.2.10(土)
筆者のつぶやき…
上記のアンケートは2024年1月11日(木)に「多様な学びのプロジェクト」が実施した「不登校のこどもの育ちと学びを支える当事者実態ニーズ全国調査」報告会のシンポジウムで発表された調査資料です。文字だけだと情報が分かりづらいと思うので図を入れて概要を説明すると…
こどもが考える学校に行きづらいと思い始めたきっかけ (不登校当事者回答)
文部科学省 「令和4年度 児童生徒の問題行動調査」(教員回答)
上記からも不登校の要因が、不登校当事者の回答では、1位が「先生との関係」で36.3%あったが、教員回答は「教職員との関係を巡る問題」1.2%と差異があった。さらに、2位「勉強はわかるけど授業が合わない」3位「学校システムの問題」を見ても、教員回答の調査と乖離があった。何故、文部科学省は毎年、当事者でなく教員回答を行っているのか疑問である。
「こどもたちのニーズ」
こども達のニーズに耳を傾けると、「社会全体で不登校の偏見をなくして『不登校の子』という目で見ないで」と心が痛む回答が1位でした。大学時代から不登校研究を行っていますが、まだまだ不登校の理解が浸透しておらず、不登校は甘えだといまだに話している人がいるのも現状です。今後は、大学院での学びを通して市民と行政が共に不登校に対して協働できるような仕組みづくりを行って行こうと思います。